真昆布の製品化までの流れについて考えている人
「製品化された昆布しか見たことないけど、一番流通している養殖昆布の作業の流れについて知りたい。どのように乾燥して、どんな作業をして製品になっているのだろう?こんぶ漁師さんの苦労や実際の作業について見てみたい。」
こういった疑問にお答えします!
- ①養殖真昆布の乾燥作業の流れについて
- ②養殖真昆布の乾燥後の作業の流れについて
- 養殖で作られた真昆布の作業の流れがわかる
- 養殖で育った真昆布がどういう行程で製品化するのか、がわかる
- 養殖はとても手間がかかっている、とわかる
- 昆布の町の住人たちは、夏は休みなしで働いているとわかる
この記事を書いている僕は、昆布作業歴が25年ほどで「昆布の生産量日本一」の町である「南茅部地区」に現在も住んでいて、昆布の作業をしつつもサイトを運営しています。
興味があれば、こちらの「こんぶ先生のプロフィール(@konbulog)」もチェックしてみてください。
昆布に関しての素朴な疑問や、不安な方はぜひ記事をご覧ください。
※記事は5分くらいで読み終わります。深掘りした解説などは、関連記事にてご確認ください。
目次
養殖真昆布の乾燥作業の流れについて
函館(南茅部)産の養殖真昆布の乾燥作業の流れについて、お伝えしていきます!
お伝えする理由としては、養殖された真昆布の魅力や、作業にどれくらいの労力がかかるのか、を知っていただくことで、函館(南茅部)産の真昆布をもっと認知していただきたいからです。
残念なことに、函館(南茅部)が昆布の生産量日本一だということを知っている人は、ごく少数です(2016年の夏に開かれた水産品の商談会での調査によると、昆布産地として函館の名前を挙げた人は1%しかいませんでした)。
ですので、現場で撮影した写真とともに、養殖真昆布の乾燥作業の流れについて、お伝えしていきます。(写真を撮ってそのまま作業に戻る、という荒技を使いました)
ちなみに、養殖真昆布の水揚げ時期のピークは、6月中頃から8月末の2ヶ月間です。
この時期は、住民が総出で養殖真昆布の作業を、早朝の3時から行います。(地区によっては深夜0時から始まる地区もある)
- ①養殖施設から真昆布を持ってくる
- ②海から引き上げた真昆布を作業場へ運ぶ
- ③真昆布の根を切り、コケムシ機械にかけ、ムシをとる
- ④綺麗になった真昆布にピンをつける
- ⑤ピンのついた真昆布を乾燥場に吊るす
- ⑥全て吊るしたら、乾燥機をまわし乾かす
①養殖施設から真昆布を持ってくる
- ①前日の明るいうちに施設に取りに行く(港内に吊るしておく・船の上で待機させる)
- ②当日の早朝3時に、直接施設に取りに行く
養殖の真昆布は、沖に施設があります。そのため、沖にある施設から真昆布を船に乗せ、港まで運びます。
港まで運ぶ作業は、朝の3時だと真っ暗で危険なため、基本的には前日の明るいうちに養殖施設から港まで運び、港内に吊るしておくか、船の上に置いておきます(その際は海水をかけている)。
地区によっては、港内が利用できず、早朝に取りに行く地区もあります。
前日の明るいうちに運ぶメリットとして、翌日が天候不良でも乾燥(加工)作業ができるというもの。
当日に取りに行く場合だと、天候に左右されるため、悪天候だとその日の作業ができない、というデメリットがあります。
②養殖施設から引き上げた真昆布を作業場へ運ぶ
※添付の写真は朝9時にとった写真のため、本来は真っ暗な中での作業です
養殖施設から引き上げた真昆布は、作業場へ運ばれます。
船の目の前に作業場がある場合は、運ぶ必要はありませんが、乾燥する倉庫(乾燥場)までは距離があるので、軽トラックや中型のトラックで運ぶ必要があります。
逆に乾燥場で作業をする場合は、船からトラックへと真昆布を乗せ、作業場へと運ばれます。
③真昆布の根を切り、コケムシ機械にかけ、ムシをとる
作業場に運ばれた真昆布は、根がついた状態のままなので、まずは根を切り落とします。※根を切る作業を、運搬中にしている漁師さんもいます。
一つの根には、5~10本の真昆布がついていて、根を切り落とすことで1本の昆布になります。
根を切り落としたあとは、真昆布をコケムシ機械にかけます。
コケムシ機械の正式名称は、「昆布洗浄機(こんぶせんじょうき)」と呼ばれています。
コケムシ機械にかける理由は、その名の通り、真昆布には「コケムシ」と呼ばれる帯状のムシがついているからです。
もちろん商品として販売される際には、コケムシは完全に取り除いてあるので、ご安心ください。
購入した、だし昆布にコケムシがついてないのは、漁師さんや加工業者さんの作業のタマモノでもあります!
④綺麗になった真昆布にピンをつける
コケムシ機械で綺麗になった真昆布は、吊るすために切った部分にピンをかけます。
ピンには2種類あり、アルミ製のものとプラスチック製のものが、昆布の乾燥作業で主に使われます。(写真はプラスチック製のもの)
昆布は海水からあげるとヌメリが出てくるため、洗濯バサミのようなピンだと、すぐに抜け落ちてしまうため、サメの歯のようなギザギザがついてるものでなければいけません。
※フリではありませんので、絶対にやってはいけません!
⑤ピンのついた真昆布を乾燥場に吊るす
※写真では見えませんが、竿にピンを引っ掛けて吊るしています。
ピンをつけた真昆布は、乾燥場の竿(さお)と呼ばれる、クギが打ち込まれた木の棒に吊るします。
乾燥前の昆布は、水分を多く含んでいるため、一本あたり1〜2kgほどの重みがあります。
重さだけでなく、ヌメリもあるため持ちづらく、手からヌルッと抜け落ちることはよくあります。
ただし同じ南茅部地区でも、尾札部地区だけは、竿自体にピンが取り付けられていて、直接吊るすという方法とっています。
⑥全て吊るしたら、乾燥機をまわし乾かす(約10時間)
※上記は昼間に撮影した乾燥場内の画像です。
※乾燥機にはいくつか種類がありますが、上記はネポンと呼ばれる乾燥機です
全ての真昆布を吊るし終わったら、乾燥機(かんそうき)と呼ばれる昆布乾燥専門の機械をかけます。
乾燥場の規模や、真昆布の本数にもよりますが、大体10時間ほどで乾燥します。
機械で乾燥する理由としては、天候などに左右されず、昆布を用意できれば作業ができるからです。台風がきても、前日に昆布を持ってきてさえいれば、作業ができます。
天日干しの場合だと、天候に左右されるため、安定して加工作業ができないのです。
つまり、機械乾燥は安定して水揚げして加工できるというメリットが大きいため、機械乾燥が主流となっているのです。
乾燥したら、あとは出荷に向けての準備作業をします。
養殖の真昆布の乾燥までの作業の流れについては、以上です。
養殖真昆布が乾燥後の作業の流れについて
しっかりと乾燥したら、あとは切ったり仕分けたりする加工作業のみとなります。
朝の3時から作業を始めた場合であれば、大体14時頃に乾燥して、その後の作業に取り掛かります。
とはいえ、乾燥するまでの間に何もしないでいるのか?といえば、そうではありません。
乾燥場の中に入って、真昆布同士が「くっついていないか?」や、「しっかりと乾いてきているか?」を確認しています。
乾燥場の中の温度は高温なため、温泉でいえばサウナに入っている状態です。
ですので、そういった確認を一通り終え、外に出ると、Tシャツもビショビショの状態です。
使う側だとわからないと思いますが、そういった見えない努力があるのです。ただ干すといっても、たくさんの行程をしっかり踏んでいるからこそ、商品として出荷できるのです。
- ①乾燥した真昆布をおろし、まとめる
- ②まとめた真昆布を加工(切る)し、大きく4つに仕分ける
- ③別々にした真昆布をまとめ、別々に出荷準備する
①乾燥した真昆布を下ろし、まとめる
真昆布が乾燥したら、運べる量にしてまとめます。
まとめた真昆布は、加工する作業場へと移動します。
運んでから、その日のうちに加工する漁師さんもいれば、翌日に作業する、という漁師さんもいます。
やり方の違いについて、漁師さんの裁量ひとつで違います。
※尾札部地区に関しては、吊るした状態で運べる量にまとめ、まとめた後でピンを外し、運ぶという作業の流れとなります。
②まとめた真昆布を加工(切る)し、大きく4つに仕分ける
まとめられた真昆布は、作業場に運ばれ、加工します。
加工といっても、メインは長さを揃えて切る、というもの。
- ①根昆布(ねこんぶ)
- ②一番切り(いちばんぎり)
- ③二番切り(にばんぎり)
- ④三番切り(さんばんぎり)
※番号順にだしの濃さは変わる
この順番はだしが出る順番でもあり、高級品として扱われる順番でもあります。
③別々にした真昆布をまとめ、別々に出荷準備する
加工作業をして、一定量になってから一つにまとめていきます。
根昆布は、根昆布だけに分けられ、一番切りは一番切りだけにまとめる、というような形となります。
だし昆布の商品の中で、「一番切り」と書かれている商品については、根昆布を切り落とした後に切られた昆布のことで、根昆布の次に濃厚なだしがとれる部位であることを表しています。
だし用として、出荷される部位のほとんどが「一番切り」で、特に表示していない場合だと、2番切りを使用している場合もあると思われます。
真昆布の主な製品はこちら(地元企業の商品)
三番切り以降は、主に加工用に用いられることが多いです。
こんぶ漁師さんのする作業としては、大きく4つに切り分け、それぞれを受け入れ先である漁協に持っていくだけ。
※上記はトラックに積んで、切り分けた真昆布を出荷する際に撮影した写真です。
養殖真昆布の乾燥後の作業の流れについては、以上です。
あとは市場から昆布を仕入れた加工業者が、だし昆布として販売したり、加工用にしたりするなど、使い分けするということです。
まとめ:養殖真昆布の作業の流れは、水揚げ・機械がけ・乾燥・切り出し・出荷の5つに分けられる
まとめとして
- ①養殖施設から真昆布を持ってくる
- ②海から引き上げた真昆布を作業場へ運ぶ
- ③真昆布の根を切り、機械にかけコケムシをとる
- ④綺麗になった真昆布にピンをつける
- ⑤ピンのついた真昆布を乾燥場に吊るす
- ⑥全て吊るしたら、乾燥機をまわし乾かす
付着するコケムシは、しっかりと除去してから製品化となります!
天日干しではなく機械乾燥が主流である理由は、天候に左右されない&安定供給が見込めるため。
乾燥機をかけている間も、昆布が「くっついていないか?」「しっかりと乾いてきているか?」を確認するために乾燥場の中に入り、作業している。
- ①乾燥した真昆布をおろし、まとめる
- ②まとめた真昆布を加工(切る)し、大きく4つに仕分ける
- ③別々にした真昆布をまとめ、別々に出荷準備する
- ①根昆布(ねこんぶ)
- ②一番切り(いちばんぎり)
- ③二番切り(にばんぎり)
- ④三番切り(さんばんぎり)
※番号順にだしの濃さは変わる
真昆布の主な製品はこちら(地元企業の商品)
養殖真昆布の乾燥作業・乾燥後の流れについては、以上です。
函館(南茅部)産の真昆布について、少しは親しみを持ち、使っていただけると嬉しいです。
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